ツアーひと段落

諸君、健やかなるか。私はたった今、鼻血が出る程に恥ずかしい思いをしたところである。それについて述べようと思う。

 

まず最初に断っておくが、私は決してど助平ではない。バンド名が「セックス某」ではあるが、誤解することなかれ。バンド名はかのJB御大の歌詞から拝借してある。だからつまり殊更にエロい人格を有する人物では決して無い。なんと、全男性中まったくの平均値のエロ度なのである。これは私が気の置けない数少ない友人たちに聴きまわって調べた結果なので、異論を挟む余地は無い。私は全くもって平均的なエロさを有する２０代男子なのである。

 

さてその平均的エロス人たる私は、総走行距離5000kmにも及ぶツアーから一昨日帰ってきた。大変にくたびれた。車内とライブハウスとコンビニと高速道路しか知らぬ生活は一時ストップ。ここはそれ、自分にご褒美でもあげねばならぬ。森田よご苦労様、これからもよろしくね、と。然るに私は自己に対し、「全くエロくない本」をプレゼントすることを決めたのである。

 

私は一度決めたら素晴らしく綿密に行動出来る男なので、とっぷりと日が暮れるのをまち、自宅からある程度はなれた「全くエロくない書籍・DVD専門店(かの太閤様を抜擢したことで有名な戦国大名の名を冠してある)」に車で赴いた。

店内に入ってみると、なるほどこれは素敵にエロくない。全くもって劣情をそそられない。素晴らしい。さらにエロくないの深遠へ。と店の奥に足を踏み入れたその刹那、店員氏(なすび似)に呼び止められた。

 

「お客様、おかばんコチラに入れていただきます。」

 

振り向かば店員氏(なすび似)が立つレジカウンターの横にオフィス感丸出しの小型ロッカーが。成る程、万引き防止ね、最近のキッズは悪いと聞くしね。オーケーオーケーここにカバンを入れて、と。

 

店内めぐること数十分。私は吟味に吟味を重ね、二冊の全くエロくない書籍を購入した。片方は一人の作家による単行本(保険)、もう片方は多数作家による月刊誌(冒険)であった。

 

ところで、最近は本屋でエロくない月刊誌に封をしてあるところが増えてきた。これでは買う前に内容を確認すること能わず。私のように気に入った作家名をしっかりと暗記して望めば大丈夫な気がするが、なんといっても入れ替えの激しい全くエロくない漫画業界。知らぬ名も日々出てくる。

 

なので私ははやる心を抑えきれず、駐車場車内で内容のチェックを始めた。あいや、軽蔑することなかれ。自分が六感すべてを駆使し選んだものが、正当な評価に値するかは、誰しも気になるというもの。例えるなら幅跳びの選手が記録を気にするようなもの。良く言い過ぎた。

 

そうして私は駐車場車内で買ったばかりの雑誌に目を落とすという状況に至った。ここで運転席のドアがノックされる。

 

「お客様、カバンお忘れですよ。」

 

うわーんめーっちゃはずかしーい！買ったばっかのエロ本を家まで我慢できずに読んでる奴みたいやーん！しかも実際そうやーん！おまけに「っあの普段あまりカバン手放さないもので･･･ｺﾞﾆｮｺﾞﾆｮ･･･ｷﾞｮﾌ！」とかいいわけしてもうたー！だっさ！すーぱーだっさ！ししししにたいーっ！！！あー鼻血でそう鼻腔があつーくなった。恥ずかしさのあまり。

 

 

このように、忘れ物には注意を払うものである。（伊曾保物語より抜粋）